「はい」と「いいえ」、言えますか? (小山先生)
大家好!こんにちは、日本人講師の小山です。
今日は日々のレッスンでちょっと感じたことがありましたので、紹介してみようと思います。
生徒さんが来校されると、私はよくお茶を勧めます。このとき、中国語でこんなふうに質問
します。
你喝茶吗?
Nǐ hē chá ma ?
「お茶、飲みますか?」
どうでしょう。うまく中国語で答えられますか?簡単なYES/NOを問う文なのですが、
実はこの質問にきちんと答えられる生徒さん、意外と少ないのです。そこで、これを一旦
日本語の会話で考えてみます。
「お茶、飲みますか?」
A 「飲みます。」/「飲みません。」
B 「はい、お願いします。」/「結構です。」
さて、日本語として自然な答え方は、AとBのどちらでしょうか?
■球をコロコロ変える日本語
私たち日本人は会話をする際、情報が重複しないように、常に新しい表現を投げかけること
でコミュニケーションを取っていきます。つまり、「飲みますか?」と問われても、「飲み
ます」「飲みません」とはそのまま返さないのです。「飲む」という既にお互いが共有して
いる情報をうまく避けて、「はい」「お願いします」や「結構です」「大丈夫です」などと
ボールを変化させて投げ返します。そうすることで、相手にぶっきらぼうな印象をあたえず、
会話もより円滑に進むのです。もちろん、Aのように答えているという方も中にはいらっしゃ
るでしょう。しかし、球をコロコロと魔法のように変えて投げ返すB式の返答法を、我々日本
人はごく自然に使っていることも、あたらめて確認しておきましょう。
■受け取った球をそのまま返す中国語
さて、中国語はと言うと、まったくの正反対です。中国語は常に直球勝負。“你喝茶吗?”と
聞かれたら、“喝。”(飲みます)/“不喝。”(飲みません)で、即バシッと相手に返します。
まさにAの答え方です。中国人にとって、この直球キャッチボールはコミュニケーションの核
です。しかし、「魔法球」に慣れた日本人にとって、この答え方はなんとも難しい!「はい」
と答えたくて、つい“是。/好的。/对。” などと答えてしまう生徒さんが、かなり多いの
です。こういった日本語式の「魔法球」はNGです。“是的。”はOKですが、それだけではダメ
です。そのあとに、“我喝。”と、やはり“喝”という情報の核になる言葉を補って答える必要が
あります。中国語では、“喝~吗?”で聞かれたら “喝” というボールを使って返す、 “是~吗?”
で聞かれたら “是” というボールを使って返す、というのが大原則です。決して魔法をかけて
はいけません。
■「はい」と「いいえ」の落とし穴
日本語の「はい」「いいえ」は、言わばオールマイティの便利な言葉なので、こういう間違い
が起こりやすいんですね。中国語は、質問にあわせて答え方を変えなければなりません。やや
こしいなと思われるかもしれませんが、これは裏を返せば、質問者の言葉の中に答え用の球が
あるということになります。だから、どんな言葉を使って答えたらよいのか、質問の中から常
にボールを見つけ出して答える習慣をつけると、会話のテンポがよくなります。ただ、生徒さん
の中には、“喝。/不喝。”とだけ答えるのは、なんだかぞんざいだなと感じる方もいらっしゃる
でしょう。でも中国語ではそんなことはないんですよ。心配なら、そのあとに感謝の言葉を添え
て、“喝,谢谢。/ 不喝,谢谢。”などと言えれば十分に合格です。
簡単なようで難しい、「はい」「いいえ」の答え方。これに気をつけるだけで、先生との会話も
スムーズになります。答えるときはくれぐれもボールは魔法をかけずにそのままで!楽しく中国
語のキャッチボールをしましょう!